人間起こしは危険!運動会で事故も?専門家はどう考えている?
最近、各地の学校の運動会で流行っている「人間起こし」。
組体操の技の一つです。
怪我や事故も起こりうると、
専門家からも危険性が指摘されて話題になっています。
これからの運動会は楽しく安全に!
危険な技じゃなくても成長を感じられるはず!
過剰に感動を求めないでいいのだ!
と言われるようになってきていますが…
あなたのところの運動会は、どうですか?
NHKシブ5時とウワサの保護者会の意見もご紹介します。
運動会で事故?「人間起こし」とは?
関連記事 紀平選手のN高はヤバイ?!ネットの高校ってどんな所?
先日、NHKのニュース番組「シブ5時」でも遂に取り上げられました。
運動会で「危なくてヤバイのでは…」と
ザワザワされ始めている「人間起こし」。
組体操の技のうちの一つです。
その「人間起こし」は、こんな技です。
↓
↓
↓
引用元 youtube「よしのよしろう・組体操・人間起こし解説動画」
複数の子ども達の上に、1人の子どもが仰向けに乗ります。
その子の体を、みんなで起こしたり倒したりするものです。
上に乗っている子の足を支点にして、
振り子のように大きく動いて起き上がるようになっています。
脳や頭部、首、腰にものすごい負荷がかかりますよね。
ぶつからなくても、何度もやったら脳震盪になりそう…。
運動会では、この人間起こしを何組もズラリと並べて、
ウェーブのように見せる所も。
引用元の動画のコメント欄には、
「学校で見た」とか「使わせてもらいます」といった書き込みがあります。
組体操を指導するために、この動画を
先生が生徒に見せている学校が結構あるようです。
この人間起こし、別名「トラストフォール」とも呼ばれています。
超基礎英単語ですが、「trust=信頼」と「fall=落ちる」ですね。
上の子と下の子の信頼があって落ちることが成り立つ技、
危ないから信頼しあえ、ということでしょうか。
そもそも英語圏にこれは存在しないので和製英語ですが。
信頼しないと危ない技…???
公教育の運動会は、そんな「決死の覚悟」で挑むべきなのか…
再考の必要があります。
人間起こしが流行ってきた背景
長年、日本の多くの学校では組体操が行われてきました。
しかし、一部の学校で行われてきた
組体操のタワーやピラミッドが高すぎて事故や怪我が多発。
危険性を指摘する声が増え、高すぎる技の数々の中止が相次いでいます。
そこで!
「組体操よりも危険性が低いだろう」との認識から、
教員の中でブームが起きたのが「人間起こし」なのです。
そりゃ、10段のピラミッドやタワーに比べれば、
少人数で高さも出ませんからね。
しかし、人間起こしもまた、一般人からも多くの声が上がっています。
- 直角に倒れてスピードもあるので事故が起こって当たり前
- 子ども本人も、怖いしやりたくないと言っている
- 練習中もヒヤッとすることがある
- 自分の子がこれをやることになったら見ていられない
- 「重大な怪我がないよう祈るしかない」という種目は、
普通の学校の行事でそもそも必要ないのでは - 自分の子が障がいを負っても、同じことが言えるのか
物理的な高さが低くなれば安全といえるものなのでしょうか?
それでは、専門家の見解は?
専門家が指摘している危険性
人間起こしの件を取り上げたシブ5時。
日本体育大学の教授も、埼玉医科大学の医師も危険性を指摘しています。
そうです!
体育のプロも、人体のプロも、
「人間起こしは危険」と警鐘を鳴らしているのです。
- 人間起こしは極めて危険
- 全身に力を入れてなかった場合、深刻な怪我につながる
- これは組体操全てを危険視している訳ではなく、
人間起こしが問題なのである - 人間起こしの上の子は、あの高さから落下すると後遺症が残る可能性が
- スピードがあるので首と頭に大きな負荷がかかり、
頚椎や脳にダメージを与える場合も
兵庫県では2017年度と2018年度を合わせて、
軽傷16件と重傷1件が報告されています。
(どうやらこの地域に「組体操のメッカ」があるようです…)
東京都でも2016年に骨折事故が起きています。
しかし、「人間起こしの事故」として統計をとっている自治体が少なく、
実際の状況は分かっていません。
きちんと調査をすれば、もっと事故件数は上がることも十分ありえます。
学校のいじめを巡る報道を見ていると、
「学校の隠ぺい体質」もよく問題になりますよね。
運動会の事故も、そうならないとは限りません。
体育と医療のプロが危険性を指摘しているのです。
専門家へのリスペクトを持ち、それは十分参考に入れるべきでしょう。
支持されてしまう背景
同番組では、教育の専門家からのコメントも。
画像はシブ5時のものですが、
Eテレの他の番組「ウワサの保護者会」からの意見なども交えてお伝えします。
なぜ、こんなに危険と言われるのに、ブームになってしまったのでしょうか?
- 教員は保護者の評価をとても気にしている
- 教員同士の評価も気にしている
- 「統率をとれる先生=良い先生」という価値観が、
教員にも保護者にも浸透している - 分かりやすい成果(難しい技ができた)がアピールできる
- 派手な見栄え、過剰な達成感など、「感動」を求めすぎる傾向がある
- クラスの輪が盛り上がる、一体感が生まれる、信頼関係が育まれる
と考える教員と児童が少なくない - 過去にやったものをすぐに止める決断ができない
- 「子ども達自身もやりたがっている」と踏みとどまってしまう
教員だけの問題ではなく、
保護者と子どもの色んな思いが交錯していて、すぐに解決に至らないようです。
やめるべき理由
人間起こしは、今すぐやめるべきだとの声はたくさん上がっています。
「ただ危険だから」ではないんです。
- 後遺症の残る可能性があるレベルの
危険な競技を、普通の学校でやる必要性がない - これは「無料のサーカス」である
- たまたまその地域の学校に入った普通の子達であって、
プロ養成機関にお金を払って入学した選手ではない - 学校教諭は、人体のプロでもないし、
雑技団の指導をするプロでもない - 成長期の子どもの体の骨・筋肉・神経に負荷がかかりすぎ
- 発表当日に教員がそばに配置されていても、結局何もできない
- 子ども達は、評価されたいという教員のためのコマではない
- 運動会のための学校生活になっている
学校行事も授業もいっぱいいっぱいで、
教員は相当ブラックな労働環境であることは周知の事実。
本来は、授業に力を入れるべきで、行事に時間を取られ過ぎなのです。
そして子どもの学校生活もまた、
「運動会のための学校」「卒業式の練習のための学校」になっています。
学校の授業予定が「運動会ありき」「行事ありき」で
スケジュールが組まれてしまい、勉強に時間が割けないのです。
そうなれば、受験にも影響してきますよね。
(勿論、受験のための学校生活でもないのですが…)
運動会をどう変えていくか
安全性は勿論、最重要ポイント。
先ほど挙げた教育の専門家も、今後の運動会のあり方について述べています。
- 日々の成果を出すという視点に立つ
- 過剰な演出はなくても感動できるということに気づく
- 運動会は本来、
子ども達がスポーツを楽しむための日であることを再認識する
「感動」は安全な演目でも得られる。
運動会に高いリスクをかけるべきではない。
危険なものでないと感動できない、という状態は麻痺しているといえます。
そもそも感動とは?
子ども達は日々、色んなことを経験して成長しているはずです。
危険で見栄えを良くしなくてもいい。
子ども達が好きな曲で踊ったっていいんです。
一生懸命やっている顔や、楽しそうに運動する顔、
友だちと喜んでいる顔、それらでも十分子どもの成長は感じられます。
毎日近くにいながら、一体子ども達の今までの何を見てきたのか…。
大人達には考えていかなければなりませんね。
分かりやすい数値で成長を図らず、
生徒の内面をよーーく見て、
どう成長したか保護者に伝えるのは、プロとしての「見る目」が必要になります。
専門性って、そういうことではないでしょうか。
難しいけれど必須スキルですよね。
まとめ
関連記事 日本でブームなるか?「イエナプラン」教育ってどんなの?
ブームになっている人間起こし。
危険性を指摘されていて、運動会のあり方を考える必要があります。
- 人間起こしは首や脳や神経に重傷を負うリスクがある
- 運動会で重大リスクを負うべきではない
- 危険なものがなくても日々の成果で感動できるようにする
- 運動会は、体を動かすのを楽しめるようにするといい
不安や危険があれば学校に相談や抗議をしていいのです。
子どもの命以上に大切なものはありません。
一生を左右する怪我を負い悲しむ子どもや家族が出ませんように。