「窓をひろげて考えよう」メディアリテラシーが体験できるすごい絵本
この絵本はすごい!
読むとメディアリテラシーが体験できちゃう、超分かりやすい絵本!
「窓をひろげて考えよう」!
メディアリテラシーって、よく聞くけど何なんでしょうか?
近年、学校で子ども達に教えるべきではないか、という声も上がっています。
この絵本を読めば、今更聞けないメディアリテラシーがバッチリ分かります!
情報が錯綜する現代で、
あなたはネットやテレビとどう付き合う??
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「窓をひろげて考えよう」
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この絵本は、読むことでメディアリテラシーを体験して学ぶ、仕掛け絵本。
著者はアナウンサー、説得力マシマシです。
アナウンサーの仕事は、ニュースの現場やスタジオから「リポート」することだけど、
実はその前にもう一つ大切なことをしているんだよ。
それは、「取材」。
現場のようすをよく観察し、関係者などから話をじっくり聞くんだ。
そのときに、まちがったことをニュースで伝えないように、
今自分が見たり聞いたりした情報が正しいかどうか判断しなくちゃならない。
でも、はじめて聞いた話をどうやってチェックすればいいんだろう?これって、取材の仕事をしている人だけに関係があることじゃないよね。
キミが友だちから話を聞いたり、
メディア(新聞、テレビ、LINE、ツイッター、インターネットなど)から
なにか情報を受け取ることも取材と同じだ。
相手の言っていることが不十分だったり、大げさだったり、
正しい情報なんだけど受け取るときに誤解やかんちがいが起きちゃうことって、あるでしょう?
そういうまちがいを減らす「コツ」を知ってたら、安心だよね。
引用元 絵本「窓をひろげて考えよう」
窓あきのページをめくると…?
さっきまで見えていた光景とは別の見え方が広がるのです!
絵本を読みながら体験して学べる!
「なるほど!」「すごい!」と思わされます。
報道のプロが作った良書オブ良書!!!
人権団体のプロによる絵本や、
海外での活動経験豊富なフォトジャーナリストの絵本とか、
様々な分野のプロが本気で描く絵本って、
すごく面白い授業を見せられているようなんですよね。
これもプロが描く素晴らしい絵本ですよ。
メディアリテラシーって何?
さて、メディアリテラシーって何なんでしょうか?
大丈夫、難しく考える必要はないんです。
この絵本が優しく丁寧に解説してくれています。
大人にも子どもにも読めて絵つきで分かりやすいのが、絵本のすごく良いところ!
この絵本によると…。
メディアから流れ込む情報をしっかり自分の頭で受けとめる力のことを、
「メディアリテラシー」って言うんだ。
どの情報も、せまい窓のなかに見えている小さな絵みたいなものだ。
「実際に見えているんだから、まちがいなく本当のことだ。決めつけてもかまわない」
とキミは思うかもしれない。
ところが、あら不思議!
窓をひろげてもっと大きな絵を見てみると、
さっき小窓のなかに見えていたものが姿を変えちゃうことがあるんだ。
テレビや新聞やインターネットや知人の雑談は、全て「情報」。
その情報を知った時に、あなたはどうしますか?
本当だと思って疑わず、拡散しちゃいますか?
一旦立ち止まって、正しいのかどうか調べたり考えたりしますか?
「それはちょっと待って!これは本当かな?誰が発信しているのかな?」
と見極めるのが、メディアリテラシーなんですね。
どんな内容?
「情報というのはせまい窓のなかに見えている小さな絵」
であるというのがこの絵本。
穴あきの窓を使った仕掛け絵本で、メディアリテラシーの体験ができるのです。
例えば、外交関係の一幕を絵にしたページ。
「日本と、どこかの国の仲が悪いらしい!」
というニュースを見た、とある女の子。
「やっぱり、あの国とは仲よくできないな」と呟いています。
そこで著者が、ちょっと待った!をかけます。
写真や動画は『映ってるんだからこれは絶対本当だ』と信用されやすいけれど、
切り取られた瞬間によって印象はガラッと変わるから、
すぐに鵜呑みにしないで考えてみよう!
と助言をしてくれているのです。
さて、穴あきの窓のページをめくると…???
数秒前の目を合わせて会話している様子が!
さっき見えていたニュースの裏側が描かれていて、
「あれ?さっきのニュースが全てじゃないのかも」と気付けるようになっています。
別の瞬間や相手の立場から見てみると、全く違うニュースになるのです。
それを仕掛け絵本で再現しているのが、素晴らしい!
メディアリテラシーの重要なポイントって?
この絵本は、メディアリテラシーの重要ポイントをとても分かりやすく挙げてくれています。
- 最初のキーワードは「まだわからないよね?」
- 他の見え方もないかな?
- 隠れてるものはないかな?
- 「そんなつもりじゃなかった」は通用しない
最初のキーワードは「まだわからないよね?」
新聞やテレビやインターネットのメディアだけでなく、友だちとの雑談にも!
まずは「まだわからないよね?」のおまじないを心の中で唱えよう、と著者はいいます。
この一言で、
「猛スピードでひろまっていこうとする情報にブレーキ」をして、
信じていい情報なのかどうかを冷静に判断しようというのです。
メディアリテラシーの最初の第一歩ですね。
「テレビで言ってたんだから本当に決まってるじゃないか!」
という思い込みを取っ払い、まずは疑おうということ。
まさかテレビや新聞やネットで嘘が広まって、
多くの大人が信じているだなんて、
子どもは思わないですから。
他の見え方もないかな?
- 「人里にクマが出た」というニュースに「危険で迷惑なクマ」と考える子
- 喧嘩の相手が「私も悪かったけど、あの子も悪かった!」
と話しているらしいと聞き、怒っている子 - 「動物園のワニが逃げた」の情報をネットで見て
「みんなに知らせなきゃ!」と拡散させようとする子
各ページで、著者は
「まだ分からないよね?」
「他の見え方もないかな?」
と呼びかけます。
他の見え方とは、視点を変えること!
視点を変えてニュースを見る時のポイントはこれ!
- 一つの立場からのニュースで決めつけず、他の立場からも考えてみる
- 伝える人が選んだ順番だけでなく、別の順番でも考えてみる
- 一つの情報源だけでなく、別の情報源はないか調べてみる
- 一瞬だけでなく、別の瞬間だったら…と考えてみる
クマのニュースなら…?
「人里にクマがでた」と報道すれば、ただの迷惑な動物退治の話。
でも、それは人から見た視点で、「クマ里に人がでた」とも見られるかもしれません。
そこに気づけば「人と動物との共存」や「環境保護」の視点で
ニュースを見ることができるようになります。
喧嘩の話なら…?
人づてに聞いた「私も悪かったけど、あの子も悪かった」は、もしかしたら順番が違うかも。
もし「あの子も悪かったけど、私も悪かった」だとしたら…?
印象が変わるし、相手の子はより反省しているように感じられますよね。
伝えてきた人が話した順番だけでなく、
違う順番の可能性も考えてみましょう、ということ。
動物園のワニが逃げ出した話なら…?
とある一般人がつぶやいたのなら、
まず動物園の公式の発表を探して、本当かどうか調べるべきです。
情報源を他にも探すことができれば、
デマやフェイクニュースに流されず拡散せずに済みます。
視点を変えるときの「ポイント」!
- 立場
- 順番
- 情報源
- 切り取られた瞬間
- 見る角度
- 背景
- 距離
- 重心(大事だと思う部分)
他の見え方を探すコツは、これらを意識して情報を見てみましょう。
隠れてるものはないかな?
上で述べたものは「他の視点でニュースを見る」ということ。
この絵本では、それに加えて
「映っていない部分も想像する」
ことを教えてくれています。
- 外国で伝染病が流行った報道を見て、
「あの国に行った同級生、近づかないでほしい」と考える子 - 大気中のCO₂濃度が減ったグラフを見て、
「最近温暖化が解決に向かっている!」と考える子 - 「1等出ました」という宝くじ売り場の看板に、
「ここはよく当たるなら買おう!」と喜ぶ子
メディアの情報も、友だちからの情報も、
色んなたくさんのことの中から一つに光を当てたスポットライト。
スポットライトの周りには光の当たらない部分があります。
その「暗がりに隠れているかもしれない部分」もセットで考えると??
同じ情報でも見え方が変わってきます。
ニュースに映らない外側を考える時のポイントはこれ!
- 本当に「みんながそう」なのか、人口に対する割合等で考えてみる
- ごく一部の数値だけでなく、長い目で見た変化やたくさんのデータで調べてみる
- いい話にすぐ飛びつかず、悪い面も隠れていないか考える
- テレビは、ニュースっぽくない光景や「該当しない人」は映さないものだと知る
外国で流行った伝染病のニュースなら…?
テレビで映ったのはマスクをして街を歩いている人の顔のアップだけれど、
本当に「みんなマスク」だったのか考えましょう。
カメラに映っていない外側まで見てみると、
マスクの人はごく一部の可能性も。
窓の外には、カメラマンが選ばなかった
「マスクをしていない元気そうな人たち」がいるかもしれません。
伝染病は気を付けるべきですが、
人口に対しての患者数はどのくらいだったのかも考えてみましょう。
そして、ニュースに踊らされて
友だちに「近づくな」と安易に差別発言するのは危険だということです。
これは多様性社会を生きる子ども達に必要な「人権教育」でもあります。
温暖化解決?のニュースなら…
取り上げられた期間のグラフだけでなく、長期間のデータも見ましょう。
スケールの大きい変化について考えるなら、
目先の様子だけじゃ判断できないことはたくさんあります。
宝くじ売り場の看板の件なら…
「また当たりが出た」という看板の表記は、
確かに「ウソ」ではないんです。
でも、くじがハズレだった人の方が圧倒的に多いはずです。
ごく当たり前ですがわざわざ
「ハズレの人の方がたくさん出ました」なんて書きません。
そこには「書かれていないこと」があるのですね。
(ブラック企業の求人広告も同じことがいえますよね。)
「そんなつもりじゃなかった」は通用しない
これも、この絵本の素晴らしいところ。
「一般人の自分も、発信者として責任が伴う」
と教えてくれているのです。
インターネットの炎上とか、個人情報の拡散とか、
現代は子どもも十分巻き込まれる可能性があります。
しかし、先生達や保護者は、
そのことの注意点を子どもに教えることができていないのが現状。
株式会社ICT総研の調査によると、
「元々SNS利用者は10~20代の若年層が多かったが、近年は40代以降も増えている」
とのことです。
園長や校長の世代は40代以降であることが多いかもしれません。
SNSを利用していない先生達からすると、
子ども達に何をどう指導してよいのか全く分からないのです。
この絵本は、テレビや新聞だけでなく、インターネットとの付き合い方を考えるきっかけにもなりますよ。
自分が発信者になる時の注意点は、こちら!
- 立場の偏り
- 順番の偏り
- 情報源の偏り
- 瞬間の偏り
- 窓の狭さ
これらは、上で述べた「情報の受け取る側」の注意点でもありますよね。
実はキミは、ただ情報を受け取るだけの人ではない。
これからおとなになるにつれて、
LINE、インスタグラム、ツイッター、フェイスブック
(こういう情報のやりとりの場をまとめて「SNS」という)、
ユーチューブなどで、自分から世の中にどんどん情報を発信していくようになる。
(略)
油断が落とし穴なんだ。
キミがいったんSNSに載せた情報は、
ふだんは小さな仲間のなかでのやり取りにとどまっていても、
だれかが「この話、おもしろい!」と反応して拡散を始めたら、
たちまち世界中にひろがってしまう力を持っているんだ。
どうせ友だちどうしだから、
という軽い気持ちで発信した言葉や動画が、
いきなり世のなかにひろがって、
見知らぬだれかを振り回したり傷つけたりしてしまう。
「そんなつもりじゃなかった」と言いわけをしても、もう手遅れだ。
今度はキミがみんなから
「なんてひどいことを発信するヤツだ!」
と言われていっせいにたたかれる。
それが、インターネットの要注意なところだ。
「そんなつもりじゃなかった」は通用しない、というのはそういうことなんですね。
昨今よく見る「バイトテロ」や「煽り運転のドラレコ映像」もそう。
ちょっとの悪ふざけや、イライラから他人に加害をしてしまった動画、
個人への誹謗中傷のコメントは、あっという間に広まり炎上になります。
顔や名前や場所、個人が特定できるような動画であるにもかかわらず、
本当に「まさか炎上するなんて」と思って投稿してしまうのです。
- 自分の見方や考え方ばかりに偏らず、
「他にはこういう立場もある」「その中で自分はこう思う」
と違う立場の考え方も合わせて伝えるとよい - 聞いた人が思い込みに走らないように、
順番の偏りを弱めるような説明を足すとよい - 一つの情報源を鵜呑みにせず、
ノーチェックで拡散して「悪気のない加害者」にならないようにする
インターネットが当たり前の時代ですから、
上記のポイントはしっかり押さえておきましょう。
子どもに伝えるだけでなく、大人も理解は必須です!
重要!加害者にならないために
絵本の中でひときわ恐ろしいページがこちら。
「犯人はコイツに決まってる!」というタイトル。
↓
みんなに疑われている人の記者会見
1994年、長野県松本市の住宅街で猛毒ガスがまかれ、
600人以上が死傷した。
近くに住む会社員Kさんが最初に通報し、
彼自身もガス中毒にかかって入院したが、
犯人ではないかと疑われた。
1か月後に退院したKさんは、
「自分は犯人ではない」と記者会見で主張した。
こ、怖い…
あのテロ事件ですね。
これをリアルタイムで詳細に知っている人というのは、
恐らく40代以降の人でしょうか。
私は当時子どもで、例の団体名を知っている程度で、
疑われた会社員の存在や社会の背景は知りませんでした。
社会を震撼させたこの大事件が、絵本に事例として挙げられたのを見て、
とてつもない恐ろしさを肌で感じます。
「当時の大人はどれほどの恐怖を感じただろう」
「当時私も報道を見ていたら、恐怖や焦りで、
この人を犯人だと決めつけて誹謗中傷に加担していたかも」
と思いませんか?
テレビや新聞では
「毒ガス発生現場にKさんの家がいちばん近い」
「警察の捜査員が大勢でKさんの自宅を調べた」
「Kさんの部屋にいろんな薬品があった」
などのニュースが次つぎと流れた。
けれど、Kさんが確実に犯人だといえる証拠は出ず、逮捕もされていない。
Kさん以外に真犯人がいる可能性は考えなくていいのだろうか?
保育園・幼稚園・学校では、多くの先生が言います。
「ほら、みんなこうやってるんだからあなたもそうしなさい」
「ねえ、今は何の時間?みんなの行動をよく見て考えて」
と、みんなと同じ行動を促し、多数派と同じが正解であるかのように刷り込みがちです。
そう教えられてきた日本人は、特に危険かもしれません。
みんなが言ってるだけじゃ、まだわからないよね?
(略)
窓のなかの「犯人がKさんである可能性」だけを見るんじゃなく、
窓のそとの「犯人がKさん以外である可能性」も当時みんな想像するべきだったんだ。
結局この疑われたKさんは犯人ではなく、
まったく無関係の人たちが集団で起こしたもの。
無実の人に大バッシングを浴びせて苦しませている中、
真犯人グループは翌年地下鉄で毒ガスをまき、
多数の死傷者を出す大事件を起こすことになってしまったのだ、
と絵本が伝えてくれています。
どんな報道も、被害者にも加害者にも、
「自分はまったく無関係」だと思ってはいけません。
「当事者性」を持って物事を見てみるのって、とても大事なことなんですね。
インターネットやテレビを通して現代人を見ていると、
よく見聞きするセリフがあります。
それは、「自分や身内が被害者だったら…許せない!」ということ。
人はみんな、被害者の立場でものを考えがちなのかもしれません。
でも、自分が加害者になる可能性は??
「自分はいつも正しいから」
「悪いことするはずないから」
という思い込みは、とても危険なんですよ。
著者はどんな人?
画像引用元 下村健一オフィシャルサイト
著者は、下村健一さん。
元TBSアナウンサーで、
「筑紫哲也NEWS23」「サタデーすばッと」等で
フリーアナウンサーとしても活躍された方です。
内閣審議官として政府の情報発信を務められ、
東日本大震災でも全力でお仕事をされたそうです。
現在は、大学で特任教授をしながら、
次世代の子ども達の情報教育をされています。
もしかすると、結構多くの子ども達が知っているかもしれない、これも…。
「想像力のスイッチを入れよう」
一人ひとりにスタビライザー(傾き修正装置)を身に付けてもらうために
小5国語教科書掲載「想像力のスイッチを入れよう」
(下村書き下ろし/光村図書)光村図書の国語教科書で勉強している、
全国の小学5年生のみんなと先生方へP.178〜183に、説明文「想像力のスイッチを入れよう」を書き下ろしました。
たぶん今年度も1月頃に、皆さんは教室で
この文章を勉強することになると思います。
教科書の文中に『 』で示した4つのキーワードを身に付けて、
君も《情報に振り回されない力》を持ってください!
引用元 下村健一オフィシャルサイト
光村図書の国語の教科書に、
メディアリテラシーについて書かれた下村さんの文章が載っています。
以前私が「教科書展示会」に行った時に、これ読んだ気がします。
道徳の教科だとついつい「こうありたいよね!」と
先生受けの良さそうな模範解答的態度が描かれてしまいがち。
この「想像力のスイッチを入れよう」は国語なので
「受け取った情報をどう扱うか」に焦点が置かれているところがイイですよね。
まとめ
関連記事 まるで写真集!絵本「みんなたいせつ」で世界がちょっと分かる?
インターネットが当たり前になりました。
情報を得られるだけでなく、自分が拡散や発信もする側になったのです。
そんな現代を生きる子ども達には、時代に合ったメディアリテラシーが絶対に必要!
「窓をひろげて考えよう」を1冊手元に置けば、基本がしっかり分かります!
大事なポイントをおさらい!
- 「メディアリテラシー」とは、情報を自分の頭で受け止め考える力のこと
- テレビ・新聞・インターネットだけでなく知人との雑談も全て「情報」である
- 情報には嘘もまざっている
- すぐに鵜呑みして拡散したり誹謗中傷したりしてはいけない
- 隠れているものがないか考えてみる
- 違う立場の視点で考えてみる
- 他の情報源も探してみる
- 発信者になれば責任が伴う
- 自分の情報も拡散や炎上の可能性があることを忘れてはならない
- デマを信じたら自分は被害者、しかしそれを拡散したら「加害者」である!