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「あなたはちっともわるくない」虐待を知り、乗り越える絵本

2018/10/26
 
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児童虐待について知ることができる絵本があるのをご存知ですか?

子どもが読んでも大丈夫な、優しい言葉と絵で書かれている絵本です。

子どもと関わる仕事をしている大人や、将来先生になりたいと考えている学生は必見です。
あ、あの子、虐待かも…と思ったら、どうしますか?

あなたはちっともわるくない


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この絵本には、友だち同士のこぐまが2匹、ちびくまとたろくまが登場します。

ある日、遊んでいると「とげ」が刺さってしまったたろくま。優しい医者のやぎ先生に診てもらうと、一方のちびくまには、足とお腹にあざがあるのを見つけます。

どうしたのかとさり気なく聞いても、「いたくないよ」と困った顔で答えたり、「なんでもないよ。ころんだの。」と返すちびくま。察したやぎ先生は、とげの話を始めます。

「からだでも こころでも とげが ささると いたいだろう。」

「たとえば おとなが なぐったり けったり つねったりすると、 こどものこころに とげが ささる。うちのこじゃない と いわれたり ばか ぐず だめなこ と どなられたり きょうだいと くらべて わるくいわれても とげがいたい。からだの だいじなところを さわられて いやなきもちになったときにも こころには きずがついている。おとなが ごはんを あげなかったり おふろに いれなかったり ちゃんとせわを してくれないときも こどもの こころには とげがささる」

やぎ先生のこの話の内容は、「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」で条文に書かれている、児童虐待の定義を、子どもにも分かりやすく説明している優れたセリフ。(身体的暴力・性的暴力・育児放棄・心理的暴力の4つ)

やぎ先生が話しながら、少しずつちびくまの発話を引き出します。するとちびくまは虐待を受けていると匂わせることを言うのです。それは、「ぼくはわるいこだからいいこになりたい。」「おかあさんはだいすき。」というもの。

そこで、この絵本の肝となる、やぎ先生のお話があります。

ちびくまは そのままで いいんだよ。たとえ わるいことをしても、 なぐるのは いけないことだ。こどもには じぶんをまもるけんりが ある。ちいさなひとを たいせつにできるのが おとななんだ。

いやなことを されたとき 『いやだ』というのも だいじなことだ。おおきいひとに なにかされて こわかったり かなしかったり いやだったら、『やめて』といって いいんだよ。

もし「やめて」と言えなかったらどうすればいいのか、とちびくまが聞くと、やぎ先生はこう締めます。

そのひとから はなれるんだ。そして だれかに はなすんだ。きみたちが しってるひとに。わたしは いつでも はなしをきくよ。

やぎ先生は虐待かもしれないと気づいたけれど、「虐待でしょ。どうしたの!?」と断定して問い詰めることはしないんですね。きっと、ちびくまが怖がってしまい、誰にも話せなくなるからでしょう。「話を聞くから待ってるよ」という姿勢を見せる、とても優しい先生です。

やぎ先生のもとを離れた2匹のこぐま。そこでちびくまは、家で虐待に遭っていること、父親が母親を殴り、母が自分を殴り、自分は妹をいじめ…という暴力の連鎖が家庭にあることを、たろくまに打ち明けるのでした。

友だちのたろくま、滑り台、ブランコ、大きな木…みんなから「あなたはちっともわるくない」と言われたちびくまは、やっと「自分は悪い子じゃないのかもしれない」と少しだけ前向きになり、自分を肯定的に考えられるようになります。

虐待かも?と思った時のやぎ先生の行動とは

最後のイラストの表現が素晴らしい。涙を流すちびくまの母親と、やぎ先生の姿。やぎ先生の机の上のシャーレの中には、母の心にささっていたと思われる「とげ」とピンセットがあるんですね。

文章では語らないけれど、きっとやぎ先生はすぐに、ちびくまの母親に連絡をとり、虐待をしたダメな母親と責めるのではなく、話し合いを設けたのでしょう。

「なぜ大人は子どもに意地悪をするの?」というちびくまの問いに、やぎ先生はこう答えています。

「虐待をする大人の心にも、とげがささっている。そうすると他人に意地悪をしたくなる。とげが抜ければ、元の自分に戻れる」

きっとやぎ先生は、虐待に走ってしまう母親の心のとげをぬいてあげたんですね。
虐待をする大人は極悪人で最低!!!と厳しく断罪するのではなくて、虐待している大人も傷ついている、助けてあげなければならない存在、と考えるからなのでしょう。この対応の仕方がとても勉強になります。

いざそういう事態に出くわせば、虐待かもしれないけど違ったらどうしよう…と迷うことは誰しも感じるはず。でも、大人も精神的に苦しい状態なのかも、と思いを馳せることも必要なのかもしれません。

巻末の解説「だれも子どもを傷つけないで」より

著者の安藤由紀さんは、子どもの虐待・性教育・人権教育を研究され、活動されている方です。他の著書もとても素晴らしく、子どもへの優しさと愛が溢れるものばかり。

「だいじょうぶの絵本」シリーズは、子どもも読めて大人も読める、分かりやすい最高の絵本です。どれも巻末には、虐待を防ぐためにどうするべきか、性被害に遭った子がいたらどうするか等の、とてもためになる大人宛ての解説が書かれています。

「あなたはちっともわるくない」の巻末には、「だれも子どもを傷つけないで」という虐待についてのコメントが書かれています。

「子どもへの虐待」は表面に出にくく、対処がむずかしいといわれています。それは、沈黙によって守られる犯罪だからです。まず、子どもは人として尊重され、どんな理由があろうと大人からなぐられたり、ひどい扱いをされたりせず、きちんとした生活上の世話をされて当然だということが、子ども自身に教えられていません。

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日本も1994年に「子どもの権利条約」を批准しましたが、残念なのは、当事者の子ども達に、その年齢に合わせて権利を教える保育や教育のしくみが確立されていないことです。

ここがとても重要だと感じました。性教育も虐待防止も、一番大事な基本は、「子どもには人権がある」ということを子ども自身が知ることなんですね。

そして、どんな人間も子どもを傷つけてはいけないと明文化されているのですが、これはつまり、よくニュースで言われるような「しつけの一環として殴った」「親だから殴っていい」なんてことも絶対にいけないよってことです。

「自分はとても大事な人間」「家族から愛されていて、自分に何かあったら家族も悲しむ」ということが理解できて始めて、「自分が愛されていると同じように、友だちも周りの人達も大事な存在で、傷つけてはならない」ということが分かるようになります。

子どもは、自分に関わり、身の回りの世話をしてくれる大人を頼り、愛しこそすれ、大人を疑うことをせず、虐待されても自分がまちがっているからだと感じてしまいます。幼ければ幼いほど、そうした心理は働きます。ですから、子どもが傷ついているかもしれないという懸念を持ち、その思いに耳を傾けようとする敏感なまわりの大人のアンテナがなければ、子どもは人間に恐怖心や不信感を抱いたまま成長せざるを得ないのです。
心ある大人が「あなたはちっともわるくない」ことを、ことばと態度で子どもに伝えることが、とても大切だと思います。

「人権教育」と聞くと、一体何から教えればいいんだ…と構えてしまいそうになりますね。

簡単に言えば、

・あなたは大事な人間である。
・言葉や暴力で傷つけられたり、体の大事なところを触られたり、世話をしないでほったらかしにされたり、というようなことはされてはいけない。
・嫌なことは嫌だと言っていいし、それは相手の年齢が上だとか大人だとか関係なく主張してよい。
・友だちも、知らない人も、みんな大事な人間で、あなたも傷つけることはしてはいけない。

これを教えることではないでしょうか。

なかなか表面化しにくく、また、公の受け皿もまだまだ十分とはいえない現状で、わたしたちが、子どもの人権への敏感な感覚を育てることが、虐待を減らしていく大切な一歩一歩になっていくのだと思います。

虐待する親も苦しんでいる

著者の安藤さんは、自身の子育てもとても苦労された様子。仕事をしながら、小児喘息とアトピー性皮膚炎のお子さんのために、毎日数時間かけて掃除し、一日に複数回お風呂に入れ、夜中には体のかゆみで泣かれ、「ぎりぎりの精神状態」だったと語っています。

24時間子どもと向き合い、密室のなかで孤独感にひたりながら育児しなければならない状況では、何が起きても不思議はないと感じます。

 

子育てする母親・父親に必要なのは、グチをこぼしたり、涙を流しあえる友人や家族の支えです。(略)くるしいと感じているお母さん、どうか、がんばりすぎないでください。「くるしいの。だからたすけて!」といえる、賢い大人になってください。(略)
くるしいことは、弱さの証拠ではありません。理解してくれる人を探してください。

子育てしてみて分かったことは私もたくさんあり、以前はまだまだ未熟な教員だったなぁと反省しています。「子どものために」という正義感から、保護者を追い込んだり傷つけたりしていたかもしれません。

出産して体がガタガタの状態で、休む間もなく、常識の通じない未知の生物の相手を24時間する…これがまともな精神状態でいられる訳がないなぁと、身をもって感じました。

今は保育士・幼稚園教諭として気を付けていることは、「親に方の力を抜いてもらうこと」ですね。本当に簡単な一言で追い込まれてしまいますから。「お仕事と育児、大変ですよね。お疲れ様です。」の言葉を忘れずに、保護者と接していきたいなと考えています。

まとめ

別の記事でもご紹介したこの絵本の著者安藤由紀さん。

関連記事 幼児期の性教育に好評の絵本「いいタッチわるいタッチ」
関連記事 自己肯定感を高める人権教育の絵本「わたしがすき」

安藤さんは子どもの性教育や人権教育を研究され、活動している絵本作家です。

安藤さんの作品は、とても心にストレートに響く言葉でつづられています。しかし残酷でもないし怖がらせる言葉もない。子どもに向けて「あなたは大切な人間で、自分で自分を守る権利がある」ことを教えてくれています。
日本の教育現場では人権教育ができていないし遅れている…という指摘もネットでよく聞かれますね。

人権って難しいものは分からないし子どもにどうやって教えればいいかも分からない…そう思う保護者や先生は、是非この絵本を読んでみてください。人権について難しい言葉で書かれていると抵抗があるかもしれませんが、子どもにも分かるはずです。
あなたは自分の好きなことをして生きていい

自分のために自由に生きることができる

そしてどんなあなたも大切な存在で家族から愛されている

きっとこれらのことが絵本を通して子どもにも伝わりますよ。

そして、幸せな子育て・保育とはどういうものか、大人も気づくことができるはずです。

めろん

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